【吉川町まちづくり基本条例(自治基本条例)試案ver1.0発表にあたって】

2002年6月10日
新潟県吉川町議会住民自治に関する調査特別委員会委員長
                      橋 爪 法 一


 本試案は、8回にわたって開催された「住民自治に関する調査特別委員会」での意見・提案を基にいくつかの先進条例(案)を参考にしながら正副委員長及び議会事務局長が協議し、作成したものです。
 試案をまとめるにあたって、
@ 分かりやすく、親しみのもてる条例にするため、「です、ます調」を用いました。法律・条例づくりにおける新たな挑戦です。笑いものになるかもしれませんが、「分かりやすさの追求」の一環としてご検討いただければ幸いです。
A これまでの吉川町の自治の歴史、取り組みの中で評価できることを「まちづくり条例」に反映させようとしました。
B 委員会で出されたご意見・提案をできるだけ生の表現で取り入れるようにしました。
C 既存の条例との整合性などの追求は、今の段階ではほとんどやらず、21世紀型の自治のあり方を議論することに力点をおいてまとめました。
 試案は自治体法務に疎い者がつくったので、弱点だらけですが、これを土台にして議論が活発化し、様々な提案が出てくれれば、と願っています。

吉川町まちづくり条例(自治基本条例)試案ver1.0

目次
 前文
第1章  目的(第1条)
第2章  まちづくりの基本理念(第2条)
第3章  まちづくりの基本原則(第3条−第6条)
第4章  町民の権利と責務(第7条−第8条)
第5章  町の役割と責務(第9条−第11条)
第6章  議会の役割と責務(第12条−第13条)
第7章  まちづくりの基本システム(第14条−第22条)
第8章  町民との協働(第23条)
第9章  連携(第24条−第27条)
第10章 まちづくり基本条例の位置付け等(第28条)
第11章 この条例の検討及び見直し(第29条)
附則

 わたしたち町民は、平和と自由と民主主義を基調とした憲法のもと、「住んで良かったと思えるまちづくり」をめざし、主権者として力を合わせ努力してきました。
 21世紀を迎えたいま、わたしたちは、吉川町の将来の担い手である子どもたちの声があちこちから聞こえ、お年寄りは生きがいを感じ、恵まれない人たちには暖かい手をさしのべる町、そして町内で暮らす誰もが町政に参加できる風通しのよい町をめざします。
 幸い、わたしたちの住む吉川町には、新潟県自由民権運動の発祥地としての民主主義の伝統があり、全国に先駆けた、義務教育に関する住民負担禁止条例の制定、ISO認証取得などの実績があります。
 わたしたち町民は、こうした土台の上に、町政運営のあるべき姿や仕事の進め方の基本的な原則を明確にし、町民一人ひとりが自らの責任と自覚に基づいて町政に参画する自治の仕組みをつくるため、この条例を制定します。

第1章 目的


 (目的)

第1条  この条例は、吉川町で暮らすすべての住民が人間として尊重され、健康で文化的な生活を営むことができるようにするため、まちづくりに関する基本的な事項を定めるとともに、まちづくりにおけるわたしたち町民の権利と責任を明らかにし、自治の実現を図ることを目的とします。

第2章 まちづくりの基本理念
 
(まちづくりの基本理念)

第2条  まちづくりは、主権者であるわたしたち町民、町、そして町以外の団体が三位一体となってそれぞれの果たすべき責任と役割を分担し、協働して進めることを基本とし、次に掲げるまちづくりを推進するものです。
 
(1)  社会福祉が行届き、すべての町民が健康で安心して住めるまち、特にお年よりなど社会的弱者が大事にされ、生きがいを持てるまちづくり。
(2)  次代を担う子どもたちが夢と希望を抱き、いつでもどこでも子どもたちと若者の元気な声でいっぱいの活気あふれるまちづくり。
(3)  環境にやさしく、豊かな自然環境と歴史・文化を大切にした、ゆったりとくつろげるまちづくり。
(4)  ガラス張りで風通しがよく、町に暮らす誰もが参加できる町政が実現し、信頼のおけるまちづくり。
   

第3章 まちづくりの基本原則

(町民主権の原則)

第3条 憲法が「地方自治の本旨」として規定し、また、国際的にも確認されているように、地方自治の主人公は住民です。町は、住民自治の実現のため、主権者である町民の参加を基本とする行政運営に努めなければなりません。

(情報共有の原則)

第4条 まちづくりは、わたしたち町民と町がまちづくりに関する情報を共有することを基本に進めます。

(総合行政の原則)

第5条 町には、主権者である町民のニーズに的確に応え、「社会福祉が行届き、すべての町民が健康で安心して住めるまち」などの政策目標実現のため、総合的な行政運営を行う責務があります。

(協働、連携と協力の原則)

第6条 町には、「社会福祉が行届き、すべての町民が健康で安心して住めるまち」などの政策目標実現めざし、町民と協働して行政運営を行う責務があります。また、町は、これらの政策目標実現のため、他の自治体と連携・協力を図らなければなりません。

第4章 町民の権利と責務

(町民の権利と責務)

第7条 わたしたち町民は、自治を実現するため、行政情報を知る権利をもち、常に行政に参加する権利をもっています。
2 わたしたち町民は、それぞれの町民が、国籍、民族、年齢、性別、貧富、心身の状況など社会的、経済的環境等の違いを超えて、まちづくりへの参加について対等平等であることを自覚して、のぞみます。
3 わたしたち町民は、まちづくりの主体であることを認識し、まちづくりの活動において、自らの発言と行動に責任を持ちます。

(子どもの権利保障)

第8条 わたしたち町民は、すべての子どもの権利を保障し、子どもの最善の利益の確保に努めるとともに、まちづくりの一員として、子どもの参加を重視します。

第5章 町の役割と責務

(町長の責務)

第9条 町長は、町政の最高責任者として自治を守り育て、町民の知る権利及び参加する権利を保障し、これを実現するための施策を講じなければなりません。また町長は、本条例に定める行政運営の仕組みを確立するとともに、多様化・高度化する行政要望に適切に対応した行政運営を行うため、職員の人材育成を図らなければなりません。

(職員の責務)

第10条 職員には、町民福祉の増進を目標に、住民自治の原則に基づき、民主的かつ効率的に職務を遂行する責務があります。また職員は、質の高い政策を形成していくため、常に政策形成能力及び政策法務能力の向上に努めなければなりません。

(職員機構)

第11条 職員機構は、まちづくりや町民の多様な行政要望に柔軟かつ迅速に対応でき、町民に分かりやすいように編成しなければなりません。

第6章 議会の役割と責務

(議会の役割と責務)

第12条 議会は、町の最高議決機関としての責任を常に認識し、町民の意思が町政に正確かつ迅速に反映されるよう活動し、行政の監視機能を高めるとともに、町民の生活水準を向上させることに努めなければなりません。
 また議会は、常に議会運営の改革に努め、情報の公開(有線放送やインターネットの活用などによって)と町民の参加を推進しなければなりません。

(議員の責務) 

第13条 議員は、町民の代弁者として議事に参加していることを常に自覚し、審議能力及び政策提案能力の向上に努めなければなりません。
 

第7章  まちづくりの基本システム

(総合計画等の策定)

第14条 町は、総合的かつ計画的な町政運営を図るため、基本構想及びこれを実現するための基本計画(以下「総合計画」という)を、まちづくりの基本理念に基づいて策定します。
2 町は、総合計画に基づいた実施計画を3か年ごとに策定し、定期点検などによって、総合計画の推進管理を的確に行わなければなりません。
3 町は、行政の各分野において条例に基づく町政運営を確保するため、各行政分野ごとに政策の基本的な方針を定めた条例を制定するものとします。

(計画策定の手続き)

第15条 町は、まちづくりの施策に関する計画で重要な施策として指定するもの(以下「重要施策」という。)の策定に着手しようとするときは、あらかじめ次の事項を公表し、意見を求めるものとします。
(1) 計画の概要
(2) 計画策定の日程
(3) 予定する町民参加の手法
(4) その他必要とされる事項
2 町は、重要施策に係る計画を決定しようとするときは、あらかじめ原案を公表し、意見を求めるものとします。
3 町は、前2項の手続により提出された意見について、採否の結果及びその理由を付して公表しなければなりません。
4 前3項に定めるものを除くほか、まちづくりの施策に関する計画の策定の手続について必要な事項は、条例で定めます。

(説明責任)

第16条 町には、町の仕事の企画立案、実施及び評価のそれぞれの過程において、その経過、内容、効果及び手続きを町民に明らかにし、分かりやすく説明する責務があります。

(情報共有の推進)

第17条 町は、町民の知る権利を保障するとともに、町政に関する意思決定の過程を明らかにすることにより、町の仕事の内容が町民に理解されるよう努めなければなりません。
2 町は、情報共有を推進するため、町の仕事に関する情報を分かりやすく提供する仕組みについての弛みない改革をすすめ、団体長会議・庁議など町の会議の公開を推進しなければなりません。
3 町は、町民の意見や提言を町の仕事に反映するため、町政懇談会等の定期的な開催に努めなければなりません。

(個人情報の保護)

第18条 町は、個人の権利及び利益が侵害されることのないよう個人情報の収集、利用、提供、管理等について必要な措置を講じなければなりません。

(評価)

第19条 町は、行政課題や町民の要望に対応して、政策や事業を適切に選択することにより、効率的かつ効果的な行政運営を図るため、評価を実施するものとします。
2 町は、評価の結果について、分りやすい形で町民に公開しなければなりません。

(財政の仕組み)

第20条 町長は、予算の編成及び執行に当たっては、総合計画を踏まえて行わなければなりません。
2 町長は、予算の編成に当たっては、予算に関する説明書の内容の充実を図るとともに、町民が予算を具体的に把握できるよう十分な情報の提供に努めなければなりません。この場合、情報の提供は、町の財政事情、予算の編成過程が明らかになるよう分かりやすい方法によるものとします。
3 町長は、町の仕事の予定及び進行状況が明らかになるよう、予算の執行計画を定めるものとします。
4 町長は、決算にかかわる町の主要な仕事の成果を説明する書類その他決算に関する書類を作成しようとするときは、これらの書類が仕事の評価に役立つものとなるよう配慮しなければなりません。
5 町長は、町の財産の保有状況を明らかにし、財産の適正な管理及び効率的な運用を図るため、財産の管理計画を定めるものとします。この管理計画は、財産の資産としての価値、取得の経過、処分又は取得の予定、用途、管理の状況その他前項の目的を達成するため必要な事項が明らかとなるように定めなければなりません。財産の取得、管理及び処分は、法令の定めによるほか、この管理計画に従って進めなければなりません。
6 町長は、予算の執行状況並びに財産、地方債及び一時借入金の現在高その他財政に関する状況(以下「財政状況」という。)の公表にあたっては、別に条例で定める事項の概要を示すとともに、財政状況に対する見解を示すものとします。

(住民投票)

第21条 町は、町の将来にかかわる重要事項について、直接、町民その他利害を有する者の意思を確認するため、住民投票その他の意思確認のための制度(以下「住民投票制度等」という。)を設けるものとします。
2 住民投票制度等に参加できる者は、原則として、吉川町で生活する満18歳以上のすべての住民とします。
3 住民投票制度等の種別の分類、当該分類に応じた意思確認をすべき事項の類型その他制度の実施に関し必要な事項は、条例で定めるものとします。
4 議会、町長その他住民投票制度等に付せられた事項に関し権限を有する者は、その結果を尊重しなければなりません。
5 賛否いずれか過半数の結果が投票資格者総数の3分の1以上に達したときは、当該地方公共団体の長その他の機関は、住民投票の結果に反する措置をしてはなりません。

(行政手続き)

第22条 町は、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図り、町民の権利・利益を保護するよう努めなければなりません。

第8章  町民との協働

(町民との協働)

第23条 町は、多様な社会的需要に対応した公共性の高い町民の活動を促し、「社会福祉が行届き、すべての町民が健康で安心して住めるまち」などの政策目標実現のため、町民と協働して行政運営を行うものとします。
2 町は、町民との協働を進めるため、町の仕事の計画、実施、評価等の各段階に町民が参加できるよう配慮しなければなりません。
3 町は、前項の町民参加において、仕事の提案や要望等、仕事の発生源の情報、代替案の内容、他の自治体との比較情報、仕事の根拠となる計画、法令等、必要な情報の提供に努めるものとします。
  

第9章  連携

(町外の人々との連携)

第24条 わたしたち町民は、社会、経済、文化、学術、芸術、スポーツ、環境等に関する取組みを通じて、町外の人々の知恵や意見をまちづくりに活用するよう努めます。

(近隣自治体との連携)

第25条 町は、近隣自治体との情報共有と相互理解のもと、連携してまちづくりを推進するものとします。

(広域連携)

第26条 町は、他の自治体、国及びその他の機関との広域的な連携を積極的に進めるものとします。

(国際交流及び連携)

第27条 町は、自治の確立と発展が国際的にも重要なものであることを認識し、まちづくりその他の各種分野における国際交流及び連携に努めなければなりません。

第10章 まちづくり条例の位置付け等

(この条例の位置付け)

第28条 他の条例、規則その他の規程によりまちづくりの制度を設け、又は実施しようとする場合においては、この条例に定める事項を最大限に尊重しなければなりません。

第11章 この条例の検討及び見直し

(この条例の検討及び見直し)

第29条  町は、この条例の施行後4年を超えない期間ごとに、この条例が吉川町にふさわしいものであり続けているかどうか等を検討するものとします。
2町は、前項の規定による検討の結果を踏まえ、この条例及びまちづくりの諸制度について見直す等必要な措置を講ずるものとします。


   附 則

(施行期日)

この条例は、平成  年  月  日から施行します。
 


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