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原発の段階的縮小と再生可能エネルギーへの転換求め意見書

 上越市議会最終日。注目の「原子力発電所の段階的縮小と再生可能エネルギーへの転換・促進を求める意見書」は賛成32、反対12で採択されました。提案理由の説明をしたのは、市民ネット改革の吉田侃議員。日本共産党議員団は、原発からの撤退と自然エネルギーへの転換をめざす立場から、全員が賛成者に名を連ねました。上越市は世界一の規模を持つ柏崎刈羽原発に隣接する自治体です。それだけに、今回の意見書提出は原発からの撤退の流れを大きくするうえで価値があります。この意見書は、国会並びに関係行政庁に提出されます。

 賛成討論に立った市民クラブの塚田俊幸議員は、「福島原発事故は決して他人事ではない。私たちは事故の教訓から、原発政策の見直しに向けて、原発の段階的な縮小をすすめながら、いままで国策として推進されてきた原発から、今度は国策として再生可能エネルギーへの転換を積極的に推し進めてもらいたいことを声を大にして求めなければなりません。上越市議会は、市民の命と暮らしを守るために安全、安心なエネルギー政策への転換を求める姿勢にあることを市民に示す時だ」と訴えました。

 しかし、今回の意見書採択に反対した人たちは反対討論に立ちませんでした。上越市議会議会基本条例では、「議会活動及び市政運営に関する自らの考えについて、市民への説明責任を果たすこと」(第3条)が求められています。これでいいのでしょうか。

 意見書の全文は以下のとおりです。

 原子力発電所の段階的縮小と再生可能エネルギーへの転換・促進を求める意見書

 去る3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)は、国内最大のマグニチュード9.0という超巨大地震とそれに伴う巨大津波により2万数千人の人命が奪われるなど、東北地方の太平洋沿岸部を中心に壊滅的で甚大な災禍をもたらしました。
 加えて、東京電力(株)の福島第一原子力発電所では、地震と津波の直撃を受け、原子炉が緊急停止したものの、絶対に有りえないとされた全交流電源喪失(ステーション・ブラックアウト)に陥り、炉心等の冷却システムが機能しなくなった結果、1号機から3号機で核燃料が溶け落ちる炉心溶融(メルトダウン)が起こりました。
 そして、1号機から4号機までが次々と水素爆発を起こし、損傷した原子炉等から多量の放射性物質を外部へ放出し続けるという国際原子力事故評価尺度で最悪の「レベル7」の過酷事故に至りました。
 その結果、原発周辺30km圏内をはじめとして陸海を問わず広範囲に放射能汚染が引き起こされ、多くの人々が避難を余儀なくされ生活や生産の場を根こそぎ奪われました。また、避難区域以外の人々にとっても、農水産物等に大きな被害がもたらされるとともに、子どもたちの健康をはじめ、不安な毎日が続いています。そして原発事故の現状や放射能の特性を考えると、いつになったら元の生活に戻れるのかわからず、希望の持てない状況にあります。
 このように天災である地震や津波に加えて人災である原発事故が追い打ちをかける未曾有の複合大災害は、「原発震災」と言われ、専門家によって長らくその危険性が強く指摘されてきました。しかし、ついに国や電力会社はその指摘を安全対策に生かすことなく、破局的な大災害に突き進んでしまいました。これまでの原子力に対する安全神話は、それを作り出してきた体制とともに完全に崩壊したと言えます。
 したがって、今回の原発事故を真に教訓化するとすれば、地震や津波が集中する地域特性の我が国にあって原発がある限り原発震災は常に隣り合わせの危険にあること、ひとたび過酷事故が起これば取り返しのつかない事態に陥る放射能特性を持つこと、また、解決策の見いだせない放射性廃棄物の処分問題やトータルとしての原子力発電のコスト高等、無限のリスクを抱えていることを改めて冷静に考えることであります。そして、省エネルギーの努力や再生可能エネルギーを飛躍的に増加させることを通して速やかにエネルギー政策の転換を図ること以外にありません。
 また、上越市はこの間、世界最大の柏崎刈羽原子力発電所の立地隣接市として、国の原子力防災指針が示す原発から半径約8~10km圏の外側ではありますが、独自の「原子力災害対策」を策定して自主的、意識的に取り組んできました。今回の事故は、防災指針における国の認識の甘さを浮き彫りにしたものと言えますが、同時に当市の取組の意義を確認し更なる対策強化を促すものとなりました。このような立場から、改めて今回の原発事故及び既存の原子力災害対策に対する深い憂慮の念を覚えるものです。
 よって、政府並びに国会におかれては、下記の事項を実現されるよう強く要望します。

                記

1 国民の安全・安心を回復するために、福島第一原発事故に係る放射能汚染の徹底した調査・評価と正確で迅速な情報開示を行うとともに、一刻も早い原発事故の収束を図ること。
2 原子力発電に依存してきた従来のエネルギー政策を抜本的に見直し、効果的なエネルギー消費の削減策を立てるとともに、太陽光、風力、地熱などの再生可能エネルギーを基幹エネルギーとして位置付け、エネルギー源の速やかな転換を図ること。
3 原子力発電所の新たな建設計画は凍結し、既存の原子力発電所についても運転の計画的停止など段階的縮小を進めること。
4 原子力発電所の安全・安心を確保するために、「原子力安全神話」という虚構をもたらした推進体制・体質をはじめとする今回の事故原因の徹底した調査・検証を踏まえ、全面的な公開性の下に地震・津波対策などに関する抜本的な安全対策を講じること。
5 今回の事故対応の徹底した調査・検証を踏まえ、EPZの範囲拡大等を含む原子力防災指針等の抜本的な見直しを行い、危険な原子力災害から国民の命とくらしを守る対策の強化・充実を図ること。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出します。

  平成23年6月24日
                      上越市議会

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2011年06月24日 14:24に投稿されたエントリーのページです。

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