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『にいがた絶景との出会い』第3弾農村風景

 きょうは一転して雨。こんなふうに雨が降ってくれると牛飼い農家としては助かります。暑い日が続いて体調をくずしかけていた牛も、一息つくからです。雨で一時期、湿度が上がったものの、午後からは涼しさを感ずるようになりました。
 朝の搾乳が終わってから、病院へ行きました。じつは胃がん検診で要精密検査となり、10日ほど前に胃カメラをのみました。医師から「小さなふくらみがあります。たぶん大丈夫だとは思いますが、念のため、一部をとって検査に出すことにしました」と言われました。その時の生体検査の結果を聞きに行ったのです。
 結果は異常なし。正直言ってほっとしました。もし、手術でもするということになれば牛の世話をどうするか、しんぶん赤旗の配達は…などと次々と心配なことが頭に浮かんでいました。
 妻との会話もこのところ、健康に係わることが多くなりました。「あんたは、ご飯を2杯も食べて、そのうえビールも飲む。それじゃ、太るわよ。ビールを飲むんならご飯は1杯にしなさい」。もっともな話ですので反論はできません。そんなわけでここ2日間ほどビールは止めていました。でも、「異常なし」の結果を祝い、今晩は350cc入り缶ビールを1本いただきました。明日からはまた、ひかえたいと思います。いや、ひかえます。
 ビールで祝いをしたくなったのには、もう1つ理由がありました。待ち続けていた村上雲雄さんの写真集が送られてきたからです。病院から帰ってきて、郵便受けに冊子小包があるのを確認したら、じっとしていられません。お昼ご飯を食べるのも忘れて隅々まで見ました。
 今回の写真集は、『にいがた絶景との出会い』シリーズ第3弾、《農村風景》(新潟日報事業社刊・1800円)。この中には、尾神岳や棚田など吉川町の風景が8枚も入っていることが事前に分かっていましたので、どんな出来上がりになっているかとても楽しみにしていました。それに、私の書いた「私の好きな農村風景」という短い文も掲載していただきましたので、本の中でどんな感じになっているか気がかりでした。
 尾神岳の棚田風景は靄がかかっていましたが、写真集の中のものは、全体として晴天のときのものが多いだけに、自然な感じがして好感が持てました。気に入ったのは、尾神集落と高沢入集落の冬の風景です。雪をかぶった柿の木の風景がぐっと心に迫ってきます。子ども時代の雪の中で遊びまわった記憶とリンクするからでしょうか。
 村上雲雄写真集『にいがた絶景との出会い』シリーズ第3弾、《農村風景》は、私のところでも扱いますので、ご希望の方はご一報ください。
 『私の好きな農村風景』 橋爪法一
 私には、見た途端に胸が熱くなる農村風景がいくつかある。
 山村の丸木橋はその1つだ。小さな川に丸太の木を2、3本渡し、縄などでしばっただけの簡単な橋。橋としての姿が美しいとか、周りの景色とつりあっているということで惹かれるのではない。丸木橋を見ただけで子ども時代の暮らしが次々と浮かんでくるからだ。
 もう40年以上も前の話になるが、当時、農家の人たちはどんな山奥の田んぼでも沢から水を引き、場合によっては横井戸まで掘って大切に管理していた。わが家にも、釜平川(がまびろがわ)という川を渡ったところにそうした棚田が数枚あった。丸木橋はそこにかかっていた。春から秋までの田んぼや畑の仕事では必ず渡った。それだけではない。山菜採り、山芋掘り、さらにはアケビ採りなど子どもも大人もみんなが使う大切な橋だった。だから、橋は、地域の人たちがみんなでつくり、みんなで守っていた。
 1年の間に何十回も渡っていた丸木橋なのだが、渡る時はいつも緊張した。特に忘れることができないのは、雨が降った後に堆肥や刈り取った稲を背負って渡る時のことだ。川の流れを見てはいけない。「オレは男だ。怖くなんかない」と自分に暗示をかけ、前を見て渡った。緊張からつま先に力が入った。渡りおえた時の安堵感はいまでも鮮明に覚えている。
 野の花風景もたまらなくいい。不思議なことに50歳になる頃から、ゆっくりしたテンポの暮らしを意識するようになった。それと同時に、歩くスピードでしか見えない小さな花などが見え始めてきた。
 私の大好きな絵本の1つに、斎藤隆介の『花さき山』がある。赤や黄色、水色などの花がひとつひとつ咲き、山全体が花いっぱいになる場面が出てくるが、美しい花はどうして咲くのか、その答えを私はこの本から教えてもらった。
 人間、やさしいことをすれば花が咲く。つらいことをしんぼうして、自分のことよりも他人のことを想ってがんばると、そのやさしさと、けなげさが花になって咲き出す。辛く苦しい時、この絵本によってどれだけ励まされたことか。
 その『花さき山』が自分の生れ育ったふるさとにもあると確信を持ったのは、カタクリ、キクザキイチゲ、オオバキスミレの群落を見た時だ。野の花は、ひとつポツンと咲くものもいいが、みんなの中で、みんなとのつながりの中で咲いてこそ美しさを増す。人間の社会だって同じではないだろうか。私の子ども時代の暮らしのように、みんなが地域の人のことを心配し、助け合う。そんな光景が農村のあちこちで見られる社会をつくりたい。


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2003年08月05日 00:00に投稿されたページです。

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